相続財産のうち、負債の方が多い可能性がある場合は、限定相続を行ってはどうでしょうか。限定相続とは相続人全員の意志で、相続を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てをすると、遺産総額を超えた債務については責任を負う必要がなくなります。
本来は相続財産でありませんが、被相続人の死亡を原因として、相続人のもとに入ってきた財産を税法上みなし相続財産として扱うもので、これに、生命保険金・死亡退職金が該当します。
法定相続になりますと、奥様が4分の3、残りの4分の1をご兄弟で配分することとなります。ご兄弟の方が相続権を主張した場合、不動産も持分で所有することとなってしまいます。だからといって、生前贈与をするべきでもないでしょう。税金の面から考えましても得策ではないと思われます。今回の場合なら、「奥様一人にすべての相続財産を譲る」という遺言をすることができます。また、この場合、兄弟には「遺留分」を主張する権利がありませんので、その遺言はそのまま有効に成立します。
原則的には受取人として指定された者が原始取得するのであって、生命保険金は、相続財産とはなりません。しかし、受取人を指定せずに死亡したときには、相続順位に従った相続人が取得します。
※原始取得とは、ある権利を他人(前主等)の権利に基づかないで取得することです。
ただし、相続税法上、みなし相続財産として取り扱われます。
法定相続証明制度とは、法務局において誰が法定相続人かが分かる法定相続情報一覧図を発行し、この一覧図をもって各種の相続手続において利用しようという制度です。
平成29年度からの導入が予定されています。
民法第903条に規定する特別受益として、生命保険金は考慮されるべきものです。
被相続人=保険契約者がその財産の中から保険料を給付している対価なので、実質的には受取人への贈与とみられるからだということを根拠にしています。
※どれだけを特別受益とするかについて、
1.実際に支払った保険料額
2.被相続人の死亡時における解約返戻額
3.被相続人が死亡時まで払い込んだ保険料の保険料全額に対する割合を保険金に乗じた金額
などの考え方があり、3.が次第に有力になりつつあります。
1.遺産総額から控除されるものは次の3つです。
1.非課税財産
墓所、霊びょうおよび祭具
死亡保険金、死亡退職金のうちそれぞれ500万円×相続人の数が非課税
相続人から国等に対して贈与された相続財産
2.債務
3.葬式費用
2.課税価格から控除されるもの
1.基礎控除
2.債務控除(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)
・養子は実子がいない場合は、2人まで、実子がいる場合は1人までを、法定相続人の人数にカウントします。
・民法第817条の2第1項の特別養子縁組による養子となったもの、および代襲相続者は、法定相続人の人数にカウントします。
・相続放棄があった場合には、相続放棄がなかったものとして、相続人の人数を定めます。
相続税の総額から控除されるもの
未成年者控除:20歳までの1年につき6万円
障害者控除:70歳までの1年につき6万円
特別障害者控除:70歳までの1年につき12万円
配偶者に対する相続税額の軽減
基本的に総ての財産が、時価評価されます。
1.不動産 土地:そのときの路線価を基準としますが、 固定資産評価額の定倍率で計算することもあります。
2.家屋:固定資産評価額を基準とします。
3.その他:借地権等その他の不動産関係の課税基準は、相続税法によって定められています。
4.現金:相続時に存在していた金額
5.預貯金:相続時に存在していた金額に利息が付された金額
6.有価証券:ほとんどが相続時の時価で評価されます。
※詳細については、個々の事例によって違ってきます
被相続人の財産に属した一切の権利義務(民法第896条)をいい、積極財産としてのプラス財産(現金や不動産など)と消極財産としてのマイナス財産つまり債務(借金など)があります。
厳密には権利義務とはいえないものであっても財産法上の法的地位といえるものならば相続の対象となります。(例:占有者の善意悪意、物上保証人としての責任、契約申込者の地位など。)
相続財産に含まれないもの
1.財産に関しない権利義務(民法第896条本文)
2.被相続人の財産に属さない権利義務(民法第896条本文)
まぎらわしいものとして 香典・生命保険金請求権・死亡退職金その他の遺族給付金・被相続人の死亡に基づく損害賠償請求権
3.財産上の地位だが、本人の死亡により消滅することが決定しているもの(一身専属的な権利義務の法定例といえる)
4.一身専属的な権利義務(民法第896条但書)
5.祭祀財産(民法第897条)
ケースバイケースのため注意が必要なもの
1.借家権
2.生命侵害による損害賠償請求権
3.社員たる地位(社員権)
4.ゴルフクラブの会員たる地位など
→(1)の借家権について、内縁の夫や妻または同居の者の借家権の承継は、相続に基づくものではなく、同居者保護の観念から、法的構成がなされています。
原則:当然承継
相続人は、相続開始の時から当然に相続財産を承継する(民法第896条本文)
・共同相続財産の帰属
相続人が複数人いる時には、被相続人の相続財産(債権債務)は、個々の相続人への具体的な帰属が決まるまでは共同の管理のもとに置かれます。
・共同相続財産の管理
複数の相続人がいる時には、被相続人の相続財産(債権債務)の管理については、管理行為として、保存行為・変更行為・その他の管理行為ができます。
管理の費用は、相続財産の中から支払います。(民法第885条)
1.遺産分割の方式
共同相続財産の最終的帰属を決定するための手続きで、当事者間の合意によるものと、家庭裁判所の審判による場合とがあります(民法第907条)。
2.遺産分割をする上での注意点
1.協議による遺産分割は、相続人となる者全員の合意が必要です。この合意が得られない場合は、家庭裁判所の審判を求める事になります。
家庭裁判所の審判は、まず、調停を行い、そこで決着しない場合に行われます。また、その調停も、当事者間の協議が整わなかったときや、当事者となる者の所在が不明であるとか、最初から当事者間で協議が整わない事が明白である場合に、起こした方が後々のことを考えれば良いでしょう。
2.相続人のうち、子供が胎児であるとか、未成年者である場合には、家庭裁判所に特別代理人を選任して貰わなければなりません。親権者と子の利益相反行為:民法第826条)
3.寄与分(民法第904条の2)について
・相続人中に被相続人の財産の形成・維持につき特別の寄与をした者があるときは、遺産分割に際してその点を考慮しないと他の相続人との関係で不公平であることから、認められた制度です。
・協議による遺産分割又は家庭裁判所の審判(調停)のどちらで、決めてもかまいません。
・考慮の対象となる「寄与」とは、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき相続人によってなされた特別の寄与です。
特別受益の持戻(民法第903条・第904条)について
・相続人中に被相続人から特別の財産的利益を受けた者があるときは、遺産分割に際し、その点を考慮して決めないと他の相続人との間に不公平が生じるため、その不公平を計算上生じさせないようにする制度です。
・相続人の受けた遺贈や相続人が生前に被相続人から受けた、ある程度高額の財産的利益であって、特定の相続人に与えられたものです。
具体的事例としては結婚時の持参金、居住用建物の購入資金・開業資金等があります。
分割の方法
「現物分割」「個別分割」「換価分割」「代償分割」などの方法があります。どの方法で分割するかは、協議による分割、家庭裁判所の審判での分割のどちらの場合でも、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して」定めることが必要です。
遺産分割の効力
遺産分割によって、共同相続財産は相続人各人の固有財産に転化します。この効果は民法上、相続開始時にさかのぼる(民法第909条)とされていますが、分割の結果、初めて相続人の固有財産になるというほうがわかりやすいでしょう。
1.相続の承認の種類
1.単純承認(民法第920条)
相続人が被相続人の権利義務を無限に相続すること。
2.限定承認(民法第922条)
相続財産の限度においてのみ相続債務・遺贈を弁済することを留保して相続を承認すること。
2.放棄(民法第938条・第939条)
1.民法所定の方式に従って行われる、相続財産を一切承継しない(相続人にならない)旨の意思表示をいいます。
2.原則として、熟慮期間としての「3ヶ月」以内に、家庭裁判所に放棄の申述をし家庭裁判所で、本人自らの意思であることの確認を受けることで効力が生じます。
3.例外としては、熟慮期間経過後に、被相続人の相続財産が、債務超過であることが、相続人において過失なくして、判明した場合には、その債務超過が明らかになった時から、起算することになります。(最高裁判例)
法定相続情報証明制度後の手続きの流れは、以下のようになるようです。
①相続人が、戸籍謄本を収集する。
②相続人は、収集した戸籍謄本をもとに法定相続情報一覧図(法定相続人が分かる関係図)を作成し、法務局に提出する。
③法務局において、戸籍謄本と法定相続情報一覧図を確認し、相続人に対して認証文付の法定相続情報一覧図の写しを交付する。
この際、戸籍謄本等は還付されるとともに、法定相続情報一覧図は5年間法務局に保存される。
④法定相続情報一覧図が戸籍謄本の代わりとなるので、この法定相続情報一覧図を用いて、相続人は各種相続手続を行う。
なお、各相続人は、この制度が導入された後も、従前と同様に、戸籍謄本を各機関に提出して相続手続を行うこともできます。
子供が既に亡くなっているのですが、その子供に子供(つまり孫)がいる場合はどうなのでしょうか。
この場合、その子供が相続する分を、その子供の子供の数に応じて分けることになります(代襲相続と言います。)。
つまり、亡くなった子供が2分の1の相続分をもっていて、亡くなった子供には3人の子供がいる場合、2分の1の相続分を3人で分けるので、6分の1となります。ちなみに、この場合も、非嫡出子は嫡出子の半分というルールは適用されます。
なお、亡くなった子供の子供(孫)がさらに亡くなっている場合で、さらに子供(つまりひ孫)がいれば、その子供達が亡くなった子供(ひ孫の親、つまり孫)の相続分をそれぞれ分けて相続します。
このルールは、ずっと続いていきます。
代襲相続は、兄弟姉妹にも適用されます。ただし、一代限り、つまり兄弟姉妹の子供(甥、姪)までで、兄弟姉妹の孫は相続しません。
兄弟姉妹の場合、孫の代まで行くと、相続人の家族とのつきあいも希薄になっていくので、相続させる必要もなく、却って問題が多くなるおそれがあるからです。
生命保険金は相続財産に含まれません。そのため、受取人に相続人が指定されていた場合には、その相続人が相続放棄をしたとしても保険金を受け取ることが可能です。ただし、保険金は「みなし相続財産」として、受取金の一部(非課税金額:500万円×法定相続人の数)が相続税の課税対象となります。指定された受取人が被相続人より先に死亡している場合には、指定されていた受取人の相続人全員が保険金受取人となります。なお、受取人が被相続人になっている場合には被相続人の財産となるため、相続財産の扱いとなり、法定相続人が相続することになります。
株式は亡くなられた日を基準に価値が算出されます。上場株式の場合、①死亡した日の終値、②死亡月の終値の月平均額、③死亡月の前月の終値の月平均額、④死亡月の前々月の終値の月平均額の中から最も低い価格が評価額となります。まずは、証券会社に亡くなられたことを通知し、遺産分割協議終了後、名義変更の手続きをすることになります。
相続した不動産が農地の場合、宅地などとは違う手続きが必要となります。というのも、農地法の規定により、誰が農地を取得したのか農業委員会で把握する必要があるからです。そのため、農地のある市町村の農業委員会に届出をしなければなりません。この届出には費用はかかりません。
農地を相続したはいいが農業に従事できる者がいない場合などに農地を売却または貸借する際にも手続きが必要となります。売却または貸借する場合には、届出ではなく、農業委員会または都道府県知事の許可が必要です。許可のない所有権の移転、貸借契約は効力が生じないため注意が必要です。この許可申請には費用はかかりません。
戸籍には次の4種類あります。
戸籍謄本:ひとつの戸籍に記載されている全員の身分関係を写したものです。コンピュータ化されている市区町村では、戸籍全部事項証明といいます。
除籍謄本:戸籍に記載されている人全員が婚姻や死亡などによってその戸籍から除かれたことにより、その戸籍に誰もいなくなった戸籍です。
改製原戸籍謄本:戸籍法などの改正によって、戸籍の記載様式等が変更されて新しく作成されることがあります。そのような際の古い方の戸籍のことです。
戸籍抄本:ひとつの戸籍に記載されている一部の人に関する身分関係を抜き出して写したものです。コンピュータ化されている市区町村では戸籍一部事項証明書といいます。
相続人の中に未成年がいる場合は、その親権者が未成年者に変わって遺産分割を行えばよいと考えられがちですが、親権者も共同相続人の一人となる場合、親権者と未成年者の間に利害が対立することとなるため、親権者は未成年者の代わりにはなれません。親権者は未成年者のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります。そして、選任された特別代理人が未成年者に代わって遺産分割協議に参加する事になります。
死者の財産に対する遺族の期待を保護する制度として遺留分があります。遺留分とは、個人の財産処分の自由を一定程度制限し、遺族のため、財産の一部を保留させる制度です。
1.遺留分権利者
兄弟姉妹以外の相続人すなわち配偶者、子、直系尊属です(民法第1028条)。代襲相続になる場合の代襲者も含まれます。
2.遺留分の割合
直系尊属のみが相続人であるときは被相続人の財産の3分の1、その他の場合には2分の1(民法第1028条)。遺留分権利者が複数の場合は、これに法定相続分を乗じたものが各人の遺留分になります。
3.遺留分減殺請求権
遺留分の侵害を回復するための権利です(民法第1031条)。相続によって受ける利益の価額が慰留分額を下まわる場合に、その差額を限度として成立します。
1.性質
規定上「請求〔権〕」という言葉が用いられてまぎらわしいですが、形成権(権利行使をするという意思表示だけで効果を生じさせうる権利)です。
すなわち、遺留分を侵害する遺贈又は贈与を失効させる形成的効力をもつ権利です。
2.権利者
遺留分を侵害された遺留分権利者又はその承継人です。
3.減殺請求の相手方
受遺者・受贈者たる相続人のほか、他の相続人の遺留分を侵害する相続分指定を受けた相続人も含まれます。
4.減殺の方法
減殺する旨の意思表示だけで、裁判によらなくてもよいです。価格算定の基準時は、現実に弁償がなされる時です。
5.期間制限
減殺請求権を行使すべき期間は限られており、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき遺贈又は贈与のあったことを知った時から1年(時効期間)、相続開始の時から10年(除斥期間)が経過すると 請求できなくなります。
6.遺留分の放棄
相続開始前の放棄:家庭裁判所の許可を必要とします。
相続開始後の放棄:自由にできます。
戸籍の「附票」を取り寄せてください。「附票」とは、その戸籍に記載されている人の今までの住所の移動の履歴が記載されているものです。法定相続人を確定する時以外にも、自動車を売却する際や、不動産の所有権移転の手続の際にも必要になる場合があります。
但し、住所が分かったとしても一番大切なことは、連絡の取り方です。このような相続人の方と対策を考える機会が最近増えています。
平成21年12月15日に改正農地法が施行されました。改正農地法第3条の3 第1項の規定により、相続の他、遺産分割、包括遺贈、時効取得、法人の合併や分割により農地を取得した場合には農業委員会にその旨を届出する事が義務となります。
これまで相続などで農地を取得した場合には、農業委員会への届出が不要だったので、農地の所有者が相続で変わった場合、誰が農地を取得したか農業委員会では把握することが困難でした。
その結果、耕作放棄地や遊休地となる農地が出現してしまったことへの反省点を踏まえ、今回の改正では、相続などでの権利取得について農業委員会への届出を行うことにより、農業委員会は農地の権利移転を把握して、その機会に農地の賃貸借のあっせんなど適性で効率的な農地の利用を促すことができるようにしたのです。
届出の期限は、相続税の申告期限および納税期限と同様、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。(一般的な相続のケースでは、相続開始から10ヶ月以内という事になるでしょう。)農地の相続登記をしてから10ヶ月以内ではないのでお気を付けください。過料(刑罰ではないのですが、いわゆる「罰金」)がある点も要注意です。
相続税の計算をするに当たり、不動産は次の方法で評価します。
土地:路線価方式で算出します。路線価は道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、さらにその土地の形状等に応じて価格を補正していきます。路線価が設定されていない地域は倍率方式で算出します。倍率方式は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて土地の価額を計算します。固定資産税評価額は、市町村の税務課にある固定資産課税台帳に登録してある土地や建物の評価額のことです。市町村の税務課で固定資産評価証明書を取得することができます。
建物:固定資産税評価額と同じです。
上記が基準となり、賃貸されている場合などには状況に応じてさらに評価額が調整されます。
遺産分割協議は法定相続人全員が参加しなければなりません。相続人の中に行方不明者がいる場合、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加する不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。また、行方不明の人の生死が不明な場合、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをすると、7年間の失踪期間満了時に死亡したものとみなされます。この場合、失踪した人についても相続が開始することになります。
寄与分は、被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をしたものについて相続において特別な考慮をしようという制度で、寄与分をもつ相続人は、評価された寄与分を取得し、寄与分を除いた遺産を各相続人に相続割合に応じて分配します。
例えば、相続人として妻Wと子供Aがいた場合、遺産が500万円で子Aの寄与分が200万円の場合、遺産から寄与分を除いた300万円を相続割合に応じて、WとAに分配します。したがって、Wは300万円の2分の1の150万円、Aは300万円の2分の1の150万円に寄与分の200万円を加えた350万円を相続します。
なお、寄与分にあたる例としては、被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、被相続人の療養監護などがありますが、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与があるとされなければならないので、単に世話をしただけでなく、そのおかげで看護人を雇う費用の支出を免れたなどの事情が必要となります。
特別受益がある場合の相続財産の分割
生前贈与などにより特別受益がある場合、被相続人の財産に贈与されたものの価格を足した分を相続財産と考えて計算します。例えば、被相続人の死亡時の財産が1200万円で、被相続人の子供Aに600万円の生前贈与がなされていたとします。相続人は、妻Wともう子供ABCです。この場合、相続財産は1200万円に生前贈与分の600万円を加えた1800万円と考えます。したがって、妻Wは900万円、子ABCは各300万円となります。しかし、Aは600万円をすでにもらっているので、-300万円となりますがAはマイナス分を支払う必要はありません。この場合、妻Wは900万÷1500万(900万+300万+300万+300万-600万)=5分の3、子B,Cは、300万÷1500万=5分の2が相続分の分配割合になります。もちろん、Aは0です。最後に、実際に分配可能な遺産価格1200万円をこの割合に従って分配するので、妻Wは、720万円、子B,Cは、各240万円相続することになります。
被相続人の親(既に死亡)が、子である被相続人の配偶者を養子としていた場合はどうでしょうか。この場合(被相続人夫婦には子供がいないとします。)は、養子は、被相続人の配偶者としての相続分と養兄弟姉妹としての相続分の両方を相続するのでしょうか。
見解は分かれていますが、実務上は、配偶者としての相続分しか認められないようです。
当たり前ですが、被相続人の非嫡出子の子を養子とした場合は、養子(嫡出子)としてのみ相続します。
例えば、亡くなった父親は、生前、長男に家を継がせるといい、全財産を長男に継がせるという遺言をしていました。次男である私は、父の遺産を一切相続できないのでしょうか。
遺留分があるので遺留分減殺請求ができます。
遺留分があるのは、兄弟姉妹以外の相続人です。つまり、兄弟姉妹は遺留分権利者にはなれないので、他の者に全財産を譲るという遺言がなされていた場合、残念ながら遺留分がないので、相続される財産はありません。
遺留分は、相続人が直系尊属のみの場合、例えば被相続人の両親しか相続人がいない場合などは、被相続人の財産の3分の1、その他の場合は、被相続人の財産の2分の1となります。これを、各遺留分権利者の法定相続分に応じて分配されることになります。
病気の程度によりますが、意思表示が不可能な場合には、成年後見制度を使うことが考えられます。ただし、後見人も相続人の場合は、利害関係が対立するので、さらに特別代理人を選任する必要があります。
相続財産の課税対象となる価格から基礎控除額・債務控除額を差し引いた課税標準額を算出し、それに対して一定の税率を金額に応じて累進課税されます。
そしてその他の控除すべきものがあれば、それを控除した額が相続税として課税されます。
1.正味課税遺産額を算出する
=(遺産総額)-(債務や葬式費用の額)+(相続開始前3年以内の贈与財産の価額)
2.課税遺産額を算出する
=[正味の遺産額(各人の課税価格の合計)]-[基礎控除(5,000万円+1,000万円×法定相続人数*)]
*(実子がいる場合の養子は1人まで、いない場合は2人までとする)
3.課税遺産額を法定相続分で按分する。
4.相続人ごとに税率をかけて税額を合計する
認知症の方は、進行具合によって法律行為を行う意思能力を欠いていることがあり、そのままでは遺産分割を行うことができません。
相続人に認知症の方がいる場合には「成年後見制度」を利用して遺産分割をすることになります。
認知症の方の代わりに成年後見人が遺産分割協議に参加します。
既に成年後見人が就任している場合にはその人が、成年後見人がいない場合には、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てます。
概ね次の手順で手続きをします。詳細は行政書士にご相談ください。
1.お父様が遺言を残されていないかご確認ください。遺言があれば、遺言に基づく遺産分割を行う必要があります。遺言がない場合は、次の手順に進んでください。
2.お父様の出生から死亡までの戸籍などを調査して、相続人を特定します。
3.民法900条に基づいた法定相続分の割合で相続するのか、相続人全員による遺産分割協議に基づく割合で相続するのか、相続人で決定します。
4.法定相続分による相続の場合は、上記2の戸籍などの公的証明書類を添付して分割の手続きを行います。遺産分割協議による相続の場合は、上記2戸籍などの公的証明書類に遺産分割協議書の添付が必要です。
5.遺産の種類ごとに次の場所で手続きを行って相続手続きが完了します。
1.不動産 管轄の法務局へ
2.自動車 国土交通省の全国の運輸支局へ
3.預貯金 金融機関へ
4.現金 相続人による分割
公正証書による遺言がよいでしょう。
遺言を残す人が、遺言書の全文、日付、氏名を自筆で書き印鑑を押します。住所は無くてもよいですが、書いた方がよいでしょう。包括的な記載でも可能ですが、できるだけ財産は特定するほうがよいでしょう。また、自筆証書および秘書証書は必ず封印してください。
公正証書遺言以外の遺言書が見つかった場合は、亡くなった人が住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所に、遺言書検認の請求をしなければなりません。また、封印のある遺言書は、裁判所で相続人かその代理人の立ち会いのもとで行わなければなりません。
この場合は、遺言者は実印が必要です。2人の証人は、認め印でかまいません。
通常、人が死ぬとその人の遺産は法定相続人が相続するのが一般的ですが、遺言書があれば、話は別です。そこで、この遺言書のことを説明します。遺書(いしょ)が一般的には「死に際に残す言葉」であるのに対して、遺言(ゆいごん、いごん)は残された遺族に対する、いわゆる「愛のメッセージ」といえます。具体的には、もし、貴方の死後、その遺産を特定の人に相続させたい場合、あるいは、その遺産をめぐり、あなたの身内(相続人)が相続争いで困らないように万一に備えて、貴方の意思を身内に伝えたい場合に作っておくのが遺言であります。ただし、民法により定められた方式で書かれているものを法的に有効な遺言書といいます。(民法960条~1044条)
特に資格はありませんが、下記に該当する人は選任されません。
1.未成年者
2.かつて家庭裁判所で後見人等を解任されたことがある人
3.破産者
4.本人に対して訴訟をしている又はしたことのある人又はその配偶者 直系血族に当たる人
5.行方の知れない人
また、一切の事情を考慮して家庭裁判所が選任しますので、申立人の意向が必ずしも通るとは限らない点で注意を要します。認知症、知的障害、精神障害で判断能力が不十分な人の法的保護と支援を目的にした制度で従来からもありましたが、現在では2000年(平成12年)4月1日から改正施行された新しい成年後見制度になっています。
具体的には、判断能力が不十分になると介護サービスを受ける場合の契約が困難であったり、不利な契約をさせられることや悪徳商法の被害にあう可能性があり、そのようなときに本人に代わって後見人等が法律行為をし、法的保護や支援をするというものです。
下記のような流れで、おおむね3~4ヶ月の期間を経て後見が開始されます。
1.家庭裁判所に後見開始の審判の申立て
2.家庭裁判所調査官による調査
3.医師による鑑定
4.家事審判官による審問
5.家庭裁判所による審判
6.後見開始
本人、配偶者、4親等内の親族(4親等内の血族又は3親等内の姻族)、他類型の援助者(保佐人、補助人)、未成年後見人、監督人及び検察官若しくは市町村長(身寄りがない場合)が申立人となり、家庭裁判所に申し立て、審判を受ける必要があります。詳しくは家庭裁判所にお問い合わせ下さい。
本人のため、財産の維持管理、生活、療養、介護に必要な手配をする権限が与えられます。反面、これは義務でもあります。後見人については全ての取引行為に、保佐人、補助人については家庭裁判所の審判により付与された特定の取引行為について代理権があります。
また、悪徳商法等の契約の取消権もあります。(保佐人、補助人は同意権の範囲内で取消権を有します。)
また、後見人等は、入院・入所手続等の契約は代理できますが、手術など医療行為に対する同意権は持ちませんので、その点は注意が必要です。
信頼できる受任者と委任事項(代理権を与える内容)を決めて、公証役場で公正証書により契約を締結します。受任者は、未成年であるなど法律で定められた一定の欠格事由に該当しなければ、ご家族、親戚の方でもなることができます。身の回りに適任者がいないときは専門家に依頼するのがよいでしょう。行政書士も任意後見契約業務を扱っています。契約に必要なものは、本人の戸籍謄本、住民票、任意後見人の住民票、本人と任意後見人の実印、印鑑証明書などです。
任意後見制度は、将来、認知症になったときのことなどを考えて、事前に自分が信頼する人と後見契約を結んでおくものです。
法定後見の場合は、必ずしも自分が信頼する人が後見人になるとは限りませんので、「自分で決めておきたい」という方は任意後見契約が適しているといえます。
法定後見との違いは、後見業務に関しては概ね同じですが、任意後見契約の場合は付与する権限を自分で決めておくことができます。
また、報酬額も決めておくことが可能です。注意点としては、任意後見人には本人の自己決定権の尊重という趣旨から、「取消権」が認められていません。
この点が、法定後見人と任意後見人の大きな違いです。
大野行政書士事務所
フリーダイヤル : 0120-176-228